第33回 右手と「下半身」のおはなし

以前にも書いたかと思いますが、脳幹部に出血を起こすとマヒやしびれなどが出るのですが、左右どちらかにキレイに分かれます。自分の場合は右半身でした。口周りも右がやや強めでしたが、だけは左に影響がでて寄り目状態でした。首のところで神経が交差しているためだそうです。右腕と右脚は動きはするものの、感覚がなく、自分の手足じゃないみたいでした。
「感覚の麻痺」という言い方をされました。

「麻痺」というと完全に動かせない状態のことを言うそうです。
感覚はなくても一応動くので、いくら不自由でも麻痺ではないですし、障害とはなかなか認めてもらえません。後に体幹に難ありということで体幹5級という障害認定をもらえてとても助かりました。しかし見た目は五体満足ですし、めまいしながらの活動はしんどいですが、ある程度の事は自分でできますし、そういった中で見えない部分の辛さは理解してもらいにくく、どこまで頑張るべきか、しんどいと言うべきか、葛藤する毎日です。
まあ、寝たきりにならず、しゃべれて、自分の足で出かけられることは喜ばしいかぎりです。しかし、こんなことを言うともっと重篤な方には怒られるかもしれませんが、「中途半端に元気になっちゃったなぁ」というのが正直な気持ちです。
手足が動かないとか、眼が見えないとか、社会生活を送るにあたって著しく不自由、と認められると「障害年金」がもらえるんです。等級と家族構成によってもらえる額は違いますが、正直、今もらっている給料よりだいぶもらえます。自分は社会復帰しましたが、四人の子どもを抱えながら最底辺の水準でなんとか生活しています。
むかし、究極の選択クイズ、というのが流行ったんです。「うんこ味のカレーとカレー味のうんこ、食べるならどっち?」みたいなやつ。今はさながら「動けるけどめまいと痺れに耐えながら通勤して最低限の給料を稼ぐのと、ほとんど寝たきりだけどお金の心配はいらないの、選べるならどっち?」と選べもしない選択肢を自問自答する毎日です。

と、まあ話はそれましたが、とにかく入院中は手足の感覚がほとんどない状態が続きました。
入院初期はまだまだ内面的には元気で、色んな欲望が沸いていました。
悶々としてた時期もあります(笑)
そんな時ある友人に、

痺れた右手を使えば、他人に触ってもらってる感じになるのでは?

とアホなメールをもらいました。ケータイやスマホの使用は禁止されてなかったので、ヒマな友人を見つけてはメッセージのやり取りをしていたのです。
確かに、それまでも夜寝ているときに誰かの手が身体に触った気がしてビクッとなることは何度かありました。
もちろん感覚をなくした自分の右手でした。
どこかでも書いたとおもいますが、感覚のない手足はきけんです
ベッドの柵に引っかかったり、変な方向に手足を曲げたまま捻って痛めたり、最悪骨折したりすることもあるのです。お医者さんにも、「実際に怪我や骨折する人がいるので気を付けるように」と何度も注意されました。
あるとき、横に置いてあった右手を前に持ってこようとしたのですが、動かしてるつもりなのに全然視界に入ってきませんでした。いくら力を入れても動く様子がなくて、「なんだろう?」と思いながら横を向いてよく見たら、ベッドの柵に右手の小指が引っかかってた、なんてこともありました。ウソみたいですがそんなことはしょっちゅうでした。そんな経験ないでしょ?
ベッドに座ってて体の向きを変えるときも、右足をよく見てやらないと変な方向に曲がっちゃいます
オレはアンドロイドか!
それくらい右手が自分の手じゃなかったので、アホみたいと思いつつも、アホな友人の言葉を無視できず、興味本位で、夜、こっそりと、右手で・・・・・・イジってみました。
・・・・・・変な感じでした。
確かに人に触られているような、というかマネキンに触られてるような、ザワザワした感じがしました。気持ちいいかと言われると・・・・・・微妙。
結果から言うと、感覚的には自分の手じゃないですが、人に触られているという感じでもなく、あくまで自分で操作してるのはわかるので、たいして興奮はしませんでした
残念ながら。
「マジックハンドでイジってるような感じ」と言えば想像しやすいでしょうか?
なんとも言えないわびしい気分になり、すっかり萎えてしまいました。
その後は、麻痺と痺れが身体や内臓にまで広がっていき、余計なことを考える余裕もなくなり、だんだんそういう元気もなくなっていったのでした。ちゃんちゃん。

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