第49回 大きなお風呂を選んで失敗した

NO シリーズ~脳出血~
かんべんしておくれ~
転院前は毎日のように看護師さんとシャワーか、看護師さんに洗髪台で頭を洗ってもらうか、体調によっては看護師さんに温かいタオルで身体拭きをしてもらってた懐かしい日々・・・。
しかし転院してからは週に1回に。
それもリハビリの先生に見張られながら(男性)。
初めてのお風呂の時に聞かれました。
「おおきいお風呂と、小さいお風呂、どっちがいいですか?」
突然、まるで大きいつづらと小さいつづらの選択を迫られたおじいさんの心境に。
広いお風呂はエレベーターの移動もあって遠いですよ。車いすで中まで入れるし広いです。」
小さいお風呂はこの廊下の先なんで近いですよ。でも狭いし段差もあって車いすも入れません。どうします?」
迷いましたが、歩行器使ってやっとよちよち歩きの自分にとって段差越えは、天城越えにも負けないくらいレベルが高かったので、イジワルじいさんの自分は遠くても楽ちんに連れて行ってもらえる広いお風呂を選びました。
後々、この決断を非常に後悔することになります。
「本当に大きい方でいいんですね?では連れていってあげましょう・・・」
身体の大きなスズメさんが、何もしていないのにお礼とばかり車いすを押して廊下を進みます。
右に曲がり、左に曲がり、みたことない場所へ出ました。
「ここから地下へおりますよ。さあ?どれくらい下なんでしょうね・・・」
古ぼけたエレベーターに乗り込み「下」のボタンを押します。
ガクン、グオーンォンォン・・・古ぼけたエレベーターが下へ向かって降りて行きます。
パンくずを持っていたら、少しずつ落としていきたいくらい不安になりました。
魔女に気づかれないように、少しずつ少しずつ廊下へ・・・あ、日本のお話でしたね。
・・・どれくらい地下へ降りたでしょうか。「チン」と音がして扉が開きました。レンジじゃないですよ?もっとも最近のレンジはチンではなく音楽が鳴ります。
目の前にはロウソクに照らされた洞窟・・・ではなくガラーンとした廊下でした。
まだまだ先へ進みます。
「・・・ここです。着きましたよ、おじいさん・・・」
立ち止まった扉の上に「大浴場」と書かれていました。
中へ入ると、脱衣所をそのまま素通りして、車椅子ごと風呂場へ入って行きました。
(あれ?車いすのまま浴場に入っていいの?服も着たままなんだけど??)
「さあ、どうぞ」
いくつか並んだシャワーとカランの前で止まりました。
確かに広いお風呂でした。大衆浴場や温泉場となんら遜色ありません。
しかし風呂場なのになぜかヒンヤリとしています。
湯けむりどころか誰もいません。 貸切でしょうか?
よくみると、大きな湯舟にはお湯が入っていません。
「廃墟になった元銭湯」に連れていかれた気分、といったところでしょうか。
シーンと静まり返っています。
「さあ、はやく脱いでください。」
「しまったー、騙された!」とイジワルなおじいさんは思いましたが後の祭り。
「グズは嫌いだよ。40秒で支度しな!」と、までは言われませんでしたが慌ててもぞもぞと服を脱ぎました。
因みに、真冬の1月です。もちろん寒いです。モロチン状態ですし。
大きなスズメさんの目の前で服を全て脱ぎ、震えながら車椅子から降りて介助されながら介護用の椅子に裸で座ります。
「さあ、おじいさんの望み通りの大きいお風呂ですよ。久しぶりのお風呂、存分に堪能してください。シャワーしかありませんけどね・・・」
くっそー、小さい方じゃったか!
・・・って、ワシなんか悪いことしたっけ?
キンキンに冷えたタイル張りの無駄に広いシャワールームでした。
震える身体でシャワーの網の中になんとか潜り込み、使える片手でざっと洗いました。
そして震える身体でバスタオルを受け取り拭き終えると、震える身体で介助されながら服を着て、また来た道を震えながら戻っていったのでした。
この間(カン)ずっと見張られてます。もちろんコカンも。
刑務所ってこんなとこなんかな・・・?(ホリエモンの体験記読んだところ、少なくともお風呂はもっとましでした。)
「広いお風呂はどうでしたか?おじいさん・・・」
それ以来、心を入れ替え、真面目になったおじいさんは、二度と大きなつづらは取るまいと心に誓ったのでした。めでたしめでたし

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