第57回 輪投げリハビリ

シリーズ~脳出血~

「作業療法」という手の動きや日常生活での動きに関するリハビリは多岐にわたります。入浴・立ちすわり・つまむ・にぎる・はさむ・持つ・書く・投げる、などなど。前回書いたオセロや将棋もあれば「輪投げ」なんてのもありました。

輪っかを投げて的の棒に引っ掛ける、という昔から世界中で楽しまれているゲームですね。

子どものころ縁日なんかでやったことあるかな、程度の認識でしたが、まさか40才越えてからハマるとは思いませんでした。簡単なようで結構むつかしい!リハビリ的にみると、両足で立ってバランスを取りつつ、輪っかの束(1回10本でやってました)を片手で持ち、投げる手で1本ずつ持ち、全身でバランスを取りながら狙って輪っかを投げる。まさに全身運動になります。

最初のころは立つのもやっとで、眼の焦点も合っておらず、手の感覚もないので持って投げるのもむつかしく全く入りませんでした。それどころかとんでもない方向にばかり飛んで行っくので、的の棒に当たっただけで「おー!」って感じでした。輪っかを持ちかえるだけで、つまみきれず落っことしたり2~3本取っちゃったりと、1本の細い輪っかを摘まんで持って投げられる態勢になるのが一苦労でした。

普段なら何気なく持って投げられると思いますが、身体が不自由になってみると何をするにしても考え考え行動することになります。「輪っかを持つ」というと簡単な動きにみえますが、持ち方にもいろいろあります。輪投げの場合、グーの形で握っちゃうと投げられません。グーで持ってパーで投げようとすると、タイミングが合わずポロンとその辺に落としちゃいます。手の振りと手を放すタイミング、力加減、リズムを一致させる必要があります。ここぞというところでパッと一瞬で手を放すためには、軽く持つ必要があります。

おそらく大半の人は無意識に、親指・人差し指・中指の3本指で摘まむように持って投げるのではないでしょうか?これがけっこう難しいのです!力加減を間違えると、くるっと輪っかが回っちゃったり、指がずれたり、良いタイミングで手が離れなかったりしますし、力を抜きすぎると落としちゃったり、思わぬところで飛ばしちゃったりしてしまうのです。

3本指で輪っかが水平になるように持ち、胸の前で1・2・3、と素振りをしながらタイミング計り、力加減を調整して押し出すようにしながら、空中やや上方に向けて柔らかくフワッと手を放して投げる。これです!

こんなだけ「輪投げ」を熱く語る人はなかなかいないんじゃないでしょうか?「いっちょ輪投げ協会でも立ち上げてやろうか!」と思って検索したらすでにありました・・・→日本ワナゲ協会
世界は広い。

輪投げで難しいのは、上からじゃないと入らないところ。真っ直ぐ狙うと棒にはじき返されます。上からフワッと網をかぶせるかのように投げないと入りません。ちょっとバスケットボールに似てるかもしれませんね、いや似てないか。

最初は的を1m先に置き、しかも椅子に乗せてやっていましたが、それでも10本中1本入れば奇跡のようでした。その後だんだん手の感覚も戻ってきて、眼の焦点も合うようになってくると成功率も上がってきました。2m先、5m先と距離を変えて遊んでいました。いやリハビリをしていました。5mはさすがになかなか入りませんが、2m先だと最高8本入れたことがあります。左手で。

基本的に右利きなのですが、幼いころは箸を左手で持っていたためか、割と左手でもいろいろできます。脳出血により右半身に痺れと軽度の麻痺が出ていますが、ひげ剃り・はみがき・輪投げ・ボール投げと、試してみると意外となんでもうまくできて自分でもびっくりしました。41才で病気になって新たな発見でした。輪投げは交互に両手で試しましたが、圧倒的に左の方がうまいです(笑)指先の繊細な動きが必要な時は、退院した今でも左の方がうまくできます。それだけは本当に助かってます。器用で良かった!

そんな感じで、字を書く練習やオセロなんかと並行して、いつも輪投げをやっていました。そんな時に必ず対抗してくるのが担当のピー助くん

「お、いいですね。じゃちょっとボクも」

といいながら必ず勝ちにきます。

いやいや、ピー助くんは健康体ですから!そりゃうまくできるでしょ!師匠は勝たせてくれてたよ!?リハビリには心の健康も必要だから、普通患者に勝たせてうれしい気持ちにさせるんじゃないの??ピー助くんはいつも物腰柔らかく言葉使いも丁寧なんですが、かなりの負けず嫌い!いろんな人が担当になりいろんなことをやりましたが、本気で勝ちに来たのはピー助くんだけです。

おい!そこ本気出すとこじゃないだろ!

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